top of page

【コミコンなひとびと】vol.01 胸組光明さん(東京/大阪コミコン 相談役)

更新日:1 日前



2025年5月2日(金)〜4日(日)、大阪・インテックス大阪で「大阪コミコン2025」が開催されます。


ニコラス・ケイジとビル・スカルスガルドが日本の「コミコン(コミックコンベンション)」に初参加するということでも話題ですが、その件が発表される直前(タイミングは偶然!)、イベントの相談役を務める胸組光明さんをキャッチ。


日本で「コミコン」が始まった経緯や、運営における裏話、そして今後の展開についてお話を伺いました。


Interview:胸組光明 / Mitsuaki Munegumi


―まず、胸組さんと「コミコン」の関わりについて教えてください。「コミコン」と「ハリコン(ハリウッド・コレクターズ・コンベンション)」の違いについても気になります。


私は1994年にスタイルオンビデオ株式会社を創業し、2012年に「ハリコン」をスタートさせました。すると2015年頃、Apple共同創業者として知られるスティーブ・ウォズニアックのチームから、「東京コミコン」共同企画のご相談を頂いたのです。


「ハリウッドスターを招致したファンイベントを企画しているのなら、米コミコンのノウハウと一緒に『東京コミコン』をやってみないか?」というお誘いが、「東京コミコン」の始まりです。


ところが彼らの資金繰りが上手くいかずに頓挫しかけたので、ビジネスパートナーのジョンと相談し、日本で興味のある方を探すことになりました。「面白そうだからスポンサーになるよ」と言って下さったのが、浜友グループさんです。


そして、株式会社東京コミックコンベンションを立ち上げ、2016年に第1回目の「東京コミコン」を開催しました。以降、2022年まで「東京/大阪コミコン」の実行委員長を務めていましたが、2024年に株式会社東京コミックコンベンションの代表を退任したので、今は「東京/大阪コミコン」の相談役としてイベントに関わっています。


―2015年と言えば日本でもアメコミ実写映画の文化が定着してきた頃でしたので(※2015年は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が公開)、時代的に生まれるべくして生まれたイベントだったように感じます。


そうですね、(「東京コミコン」の開催は)時間の問題だったと思います。そうすると、誰がその役割を担うか、ハリウッドスターを誰がどう連れてくるのか、という話になりますよね。各映画会社は作品のプロモーション来日を企画したことはあっても、サイン会や撮影会を仕切ったことはなく、ギャラの相場も分からない。そこは、やはり慣れている人でないと難しかったのではないかと思います。


ということで、ハリウッドスターのブッキング自体は難易度の高い仕事ではなかったのですが、第1回目にどれだけビッグな方を招致できるのか、という点は課題の一つでした。結果、“マーベルの父”であるスタン・リーと『アベンジャーズ』ホークアイ役のジェレミー・レナーを招致することができ、とても盛り上がったので良かったです。


また、その他のコンテンツも大きな課題でした。ご存知の通り、元祖コミコンと言われる「サンディエゴコミコン」は1970年代、皆でコミックを持ち寄って売り買いするコミックマーケットとして始まったわけですよね。それが、1990年代の終わり頃から、アメコミの実写映画に伴って映画会社が参入してきたことで、一気に規模が拡大しました。


日本で第1回目を開催する際には、やはり「サンディエゴコミコン」等を念頭に置き、「コミコン」の核となる、主にアメコミ実写版を手掛ける各映画会社にアプローチしました。その映画会社さんの方で本国/本社側に「公式として参加するイベントとして問題ないかどうか」の了承を得るのが一番大変だったかと思います。


どの企業も「参加を決めるのなら、ブランドに傷がつかないようにしなくては」という点を重視していますから。ただ、スタン・リーが名誉親善大使を務める企画として動いていたので、許諾を得やすい状況だったのではないかと思います。


故スタン・リーは「東京コミコン」の永久名誉親善大使。写真は2023年「東京コミコン」のフォトスポットにて。
故スタン・リーは「東京コミコン」の永久名誉親善大使。写真は2023年「東京コミコン」のフォトスポットにて。

―なんだかんだ順調にスタートを切ることができた、ということでしょうか。


いえ、「コミコン」自体、洋画や海外ドラマ等に携わる業界人の間では有名でしたが、一般的には全く知られていなかったので、「こんな企画はできないのではないか」という外野の声はけっこうありました。出資者である浜友グループさんも不安を感じていたと思います。


それに、私たちも出展者の方たちもどのような客層か予想がつかない部分がありました。第1回目は、いわゆる“萌え系”のフィギアのお店に全く人が寄ってこない、全く物が売れない、ということもありましたし、イベントの収益面でもやや厳しかったです。


でも、3万人のお客さまが集まり、「コミコンが日本にきてくれた!」という嬉しい反響も多く頂くことができました。以降、“ハリウッド映画をテーマにしたコンベンション”という軸からは外れずに、様々なコンテンツを増やし、客層を広げていくことに努めています。


―その軸があるから、プロレスの試合や声優さんの企画があっても、イベントとしてまとまりがありますよね。


最初にプロレス企画を実施した時には、映画会社の方から「何ですかあれは?」と驚かれてしまいましたけどね(笑)。声優さんは、声を担当されたハリウッドスターと登壇し、イベントを盛り上げて下さる方もおりますし、日本の「コミコン」にとって非常に重要な存在だと思っています。


―「コミコン」といえば、ハリウッドスターのキャンセルが“あるある”ですよね。


これはもう、仕方のないことでして……。「サンディエゴコミコン」もそうですし、世界中の「コミコン」における日常茶飯。ハリウッドスターは、本業(=作品撮影)が入ってしまった場合にはキャンセルできるような契約を結んでいます。なので、世界各国どのイベンターも、多めにブッキングをしておく、というのが常なのです。


―2019年はオーランド・ブルームの来日が二転三転して、大変そうでしたね。


ありましたね。この時、(ブルームの婚約者)ケイティ・ペリーが妊娠中だったんですよね。でも結局ケイティも一緒に行きたいと言い、それに対してオーランドはノーと言えなかったようです。



―その他、ハリウッドスターにまつわる裏話などはありますか。


(過去の出演ラインナップを眺めつつ)イベントの親善大使をお願いしているダニエル・ローガンや、「コミコン」「ハリコン」に何度か出演してくださっているクリストファー・ロイド、マイケル・ルーカーとは、個人的に家族ぐるみでお付き合いさせていただいています。彼らはもちろん、これまでイベントに参加してくださった方たちは皆、本当に素敵な方たちばかりですよ。


―皆さんのお人柄、ステージ越しにも伝わってきます! ところで、「ハリコン」で複数回来日しているスティーヴン・ユァンは、「コミコン」にブッキングされないのですか?


実は今年、ノーマン・リーダス、アンドリュー・リンカーンとの3人揃い踏みで「大阪コミコン」に招致しようと思っていたのですが、ブッキングに難航しまして……。以前より話は出ているので、いつか「東京コミコン」で実現できるかもしれませんね。


―色々タイミングが合えば最高ですね。社内で、ブッキングが成功して最も盛り上がったハリウッドスターは誰ですか?


クリス・ヘムズワースですかね。あの時はかなりギリギリで決まったんです。あくまで偶然なのですが、たいてい大物のスターがラストで決まるんです。今回の「大阪コミコン」のニコラス・ケイジも然り。特に、二度目・三度目ではなく、初めて来る方が直前に決まることが多く、そうなると運営チームとしても大変盛り上がります。


―その“ラスト”のタイミングは、大体いつ頃でしょう?


理想は2ヶ月前、最低でも1ヶ月前には確定させたいのですが、やはりハリウッドスター側の都合もあるから難しいですね。突然ポンと決まったりします。


―いつかブッキングしたい、と思っている方はいますか?


よく名前が挙がるのは、ジョニー・デップ、ロバート・ダウニー・Jr.ですね。ただ、世界的にも高額なギャラの方達なので、なかなかハードルが高くて。あとは、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルベスター・スタローン、メル・ギブソンなどをレジェンド枠としてお呼びしたいなと思っています。シュワちゃんには実際にお目にかかったことがありますが、とても気さくな方でした。義息子クリス・プラットと一緒に来ていただきたいですね。


―息子パトリックも一緒だと、なお最高ですね。さて、「大阪コミコン」について教えてください。「東京コミコン」に比べ、ゆったりとした空気感が魅力ですよね。


あれはおそらく、開催地であるインテックス大阪の建物の構造が影響していると思います。真ん中に中庭があり、それを取り囲む形でホールが設置されているので、ゆったり感が出るんですよね。中央を横切って移動できるので、運営側としても凄く楽です。市内中心からは少し離れていますが、とても良い施設だと思います。


―今回の「大阪コミコン」における新たな試みはありますか?


例えば、ノーマン・リーダスとマッツ・ミケルセンが登場キャラクターを演じた『DEATH STRANDING』など、“ゲーム”は、ハリウッド作品と親和性のある要素だと思っています。そこで今回は、ゲームエリア「プレイヤーズ・ジャングル」が初登場します。


運営チームの若者たちのアイディアを取り入れた企画で、新感覚ARスポーツ『HADO』のエキシビジョンマッチ、ボードゲーム/PCゲーム体験などを楽しめるエリアになる予定です。


―私(筆者)はあまり物を増やしたくないタイプなので、「何か購入する」というアクション以外の、無料で楽しめるコンテンツがもっと増えてほしいなぁと思っています。


映画やドラマで使われた小道具の展示コーナーや、セレブが登壇するステージ、プロレス試合を鑑賞できるリング、写真を撮れるフォトスポット、グルメエリアに時々登場する大道芸など、無料でも楽しめるコンテンツを提供することも、心がけています。


―“音楽”の要素を取り入れたものはいかがですか? この分野に詳しい☆Taku TakahashiさんにDJしていただくなども楽しそうですよね。


それもありですね! 実は、映画音楽を演奏するプロの弦楽四重奏団によるパフォーマンスはどうか、と案を出したことがあります。一旦閉場を挟んでオーケストラを入れて、ダニエル・ローガンが司会進行を務める『スター・ウォーズ』の生演奏会や、『ハリー・ポッター』や映画音楽のメドレーなど……。小規模でも良いので、音楽企画はやってみたいですね。



―その他、何か温めている企画はありますか?


検討中なのは、『エイリアン』シリーズのデザイナー、H・R・ギーガーのコーナーです。サイン入りポスターや原画、書籍、造形物など、ある程度の量を所有しているので、それらを飾れたら良いなと思っています。


以前、エイリアンの商品を制作した際、ご本人に全て監修していただいたことがありました。造形物を見せると、「本当は少し違うんだよ」「こうした方がいいね」と、B4サイズの普通のルーズリーフにスケッチをして教えて下さり、尚且つ、そこに「MUNE」と書いて渡してくれたのです。


ギーガーは映画会社に指示を出す際、オリジナルのスケッチは渡さず、必ずコピーを渡すようにしていたんですよ。でも、私が受け取ったのは、私のために書いてくれたエイリアンの頭の絵のスケッチで、しかも原本。これは、宝物です。


ギーガー好きな方たちは愛が深いと思うので、そういった展示をきっと喜んで下さるのでは、と思っています。


―まだまだ隠し玉がありそうですね。今後の展開も楽しみにしております!


© 2025 サンディエゴコミコン通信

bottom of page