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東京コミコン2024レポート:『極悪女王』ステージ編

「フォークいくぞ〜」と、ダンプ松本(を演じるゆりやんレトリィバァ)のモノマネが流行るぐらいNetflixドラマ『極悪女王』にハマり込んでいた、我々SDCC通信。そんなこんなで、「東京コミコン2024」のベストステージは、初日の特設リングステージで行なわれた「スターダム×マーベラス×極悪女王スペシャルステージ」でした。

 

前半は、世界トップの女子プロレス団体「STARDOM」と、長与千種による団体「Marvelous」などによるプロレス3試合が実施。3試合目、刀羅ナツコ率いるヒール軍団が、客席に乱入したりレフェリーと喧嘩したりとやりたい放題で、魔法少女感溢れる相手チームとの対比も含めてとても見応えある勝負に。30分があっという間でした。



その後、Netflixドラマ『極悪女王』に関するトークステージへ。ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァが竹刀を持って客席を乱し、ダンプ松本たちの所属する全日本女子プロレスを経営していた松永兄弟の俊国を演じた斎藤 工がゆりやんをいなす寸劇(?)から始まりました。





その他の登壇者は、当時ダンプ松本とライバル関係にあった長与千種、ダンプ松本の後継者である刀羅ナツコ。実話ベースの『極悪女王』を振り返りつつ、今後の女子プロについて話を繰り広げる上で、バランスの良い4名が集結。撮影の裏側や当時のエピソードなど、面白すぎる話が次々と語られていきました。(「フォークいくぞ〜」も飛び出し、大興奮!)


トークステージの内容を書き起こしてみましたので、『極悪女王』ファンは是非ご一読を!(※一部、音声が聞き取れなかった箇所などは省略しています)



 ー撮影の裏側や役作りについてお話伺わせてください。

 

ゆりやん ダダーン!(※Netflixの起動音のモノマネ)私はダンプさんの役を演じるにあたって、まずはプロレスの練習をしました。体づくりはすべて長与千種さんと「Marvelous」の選手の皆さんに全部教えていただき、入門させていただいたような気持ちで日々練習しました。役作りと言っても本当に贅沢なことで、当時のお話をご本人から教えていただけますから。当時の映像や資料はもちろん、長与さんやダンプさんに色々と教えていただいて、タイムスリップしていたかのような期間でした。

 

ー長与さんはそれを実際に見て、「ここがすごかった」などありましたか?

 

長与 渋谷の街など色々な場所に、ダンプ松本を演じるゆりやんさんのポスターが大きく貼られていたのですが、あの表情が、私がいつもやられている時に見えていた顔なんですよね。だから、あの顔を色々な所で見ると、やられている自分しか分からないぐらい。(〜中略〜)実は斎藤さんにもレフェリーの練習をしていただき、一応投げられた時のために、急に受け身の練習などもしていただいたり。2年間かかったのですが、その2年間のほぼほぼ、練習がついて回ったというかたちでしたね。撮影で一番面白かったのは、試合の撮影をする時に、皆「試合行ってきます」って言っていったこと。俳優さんたちがレスラーに変わっちゃったのかな、と思って面白かったです。

 

ゆりやん 撮影って言わなかったですよね。楽しかったです。

 

ー斎藤さんは松永俊国さん役ということで、プロレス界の裏側や興行の世界という、普段生きていて感じられない世界での役柄でしたか、いかがでしたか?

 

斎藤 ドゥドゥーン!(※Netflixの起動音のモノマネ)プロデューサーの一人の後輩にあたる同級生が、俊国さんの息子さんだったんですね。クランクイン前にお父様の事を伺ったり、松永家がどういう存在だったのかをリサーチさせて頂き、現場で長与さんからも当時の生の俊国さんのお人柄も聞けて。松永兄弟は、作品内ではある意味極端に描かれているのですが、その背景にある“本当の想い”みたいなものを、たくさん教えていただきました。海外遠征時、選手たちにお金を渡して、「海外の興業の方たちに何かしてもらったら、こちらからもてなすことをしなさい」など、どこにケチで、どこに大判振る舞いしていたか、ということだったり。お陰様で、俊国さんの輪郭がすごく見えた状態で演じさせて頂きました。

 

ゆりやん 憎たらしかったぁ〜。

 

長与 (松永兄弟の)電卓を叩くシーンがあるのですが、実際にやられたことがあるんです。「次の試合、これぐらいでどうだ」って聞かれたことがあって。そこで俊国さんと喧嘩になっちゃったってことがある、リアルエピソードなんです。私はその時すごく尖っていたので、「私の試合に値段をつけるな」と。でも、ダンプさんは、「ゼロが足りなくない?」って言っていたらしいんです。ダンプさんの方が交渉術とかとても上手いんじゃないかなぁと。

 

ー作中で登場した「ブック」という言葉について教えてください。

 

長与 俊国さんが大きな会場を決めていくんですよね。たくさんの方にお越しいただくので、松永兄弟が描く最後の終わり方をしてほしいんですよ。これはリアルに昭和の時代、あったことなんです。それをいつも破っていたのが、私とダンプ松本なんです。だから、「ブック破り」は私とダンプ松本に限り、必ずあることなんです。だから俊国さんが常に「ちょっと来い」って言って、交渉をする。だから本当に皆さん、間違いないでください。全女さんは、その当時は「●●さん勝ってくださいね」「次は勝ってくださいね」ということを言いたかったんです。でも私たちには、それができないぐらい憎しみあっていました。本気で憎しみあって。でも今や、二人で本当に苦労してきたから、今はめちゃくちゃ仲が良いです。その憎しみあっていた時なので、自ずとブックを破っていきます。これがリアルストーリーです。「今日、息の根を止めてやろうかな」と思うぐらい試合をやっていて。それを上手に操るのは松永3兄弟でした。

 

ー刀羅選手はダンプ松本さんの後継者として指名されています。プレッシャーなどはありますか?

 

刀羅 私は、この3人と一緒にこの席に座るのもおこがましいと思うぐらいですが…。

 

ゆりやん おこがましくねーよ!

 

長与 ヒールはそんなこと言っちゃダメ(笑)。

 

刀羅 今は、1980年代みたいにテレビでプロレスが放送されたり、各メディアがすごく取り上げてくれるというのがなくて。「あ、プロレスなんてまだやっているんだ」って言われるような小さい世界でやってきた。それでも私は、どんな時代も、“悪”というのは必ず必要だと思うから、自分の中ではやってきたのだけれど、今回『極悪女王』という全世界の人に観てもらえる作品ができて、今やっている自分たちにもようやくスポットライトが当たってきたということで。プレッシャーというよりも、これを上手くどう生かして自分たちで活躍していこうかなとワクワクしている感じではあります。

 

ーヒールとしての信念はありますか?

 

刀羅 折らない、負けない、挫けない。そして、いつも私が正しい、です。

 

ー長与さん、刀羅選手へのアドバイスはありますか?

 

長与 刀羅選手のことはヒールターンする前から何となく知っていて、ずっと若い時から試合を観させて頂いて。今日の試合で頑張っているのを見て、微笑ましく思いました。でも私から先輩としてアドバイスをするならば……優しいです。あなたは優しいです。一切受けなくていいと思います。その力を絶対に持っているはずです。すごく良い人が出ちゃっているから。ダンプさんは一切いい人を出さなかったから。逆に、お客さまに喧嘩をふっかけていましたから。でも、ダンプ松本の後継者ということで、とても楽しみにしています。それと、本当に一流のヒールになるために一流のベビーフェイスを育ててください。お互いにライバル関係になって、本気で憎しみあうぐらいの人をつくっていくと、面白くなると思います。そうすると、この優しいところが……。

 

刀羅 あまり優しいって連呼しないでください。(笑)

 

長与 可愛いから皆拍手しているんでしょ?(笑)

 

<会場から拍手起こる>

 

長与 今日は今日で。ここから本当、ヒールとしてどんどん活躍していってくれたら面白いかなと思うので、ぜひ。ゆりやん、さっきも言っていたんですけどね。ダンプさんのマイクの持ち方ってどうでしたっけ?

 

ゆりやん (かしこまった口調で)失礼致します。

 

長与 一言お願いします。

 

ゆりやん (荒い口調で)ガタガタうるせーぞおめーらー!



刀羅 会えて嬉しいです。

 

ゆりやん 嬉しくねーだろ!

 

斎藤 嬉しいって言ってんじゃん。(笑)



斎藤 フォークも持っています。

 

ゆりやん いくぞー! よく見とけー!





ーゆりやんさん、女子プロレスラーデビューへの想いはありますでしょうか?

 

ゆりやん おこがましいのですが、プロレスラーさんはめっちゃ格好良いし、ダンプさんも憧れですが、長与さんにも教えて頂いて、なりたい気持ちは実はあります。でも、さっき試合を観させて頂いてたんですけれど、竹刀を持っていたんですよ。そしたら刀羅さんが「貸せよオラァ!」って言われた時本当に怖くて。私もうこの世界ではできない、怖すぎて(笑)。お客さんに、竹刀持って暴れるのやめてくださいっ!!

 

ー先ほど登場した玖麗(くらら)さやか選手と斎藤さん、繋がりがあるのですよね?

 

斎藤 一昨日放送になった、日本テレビの『こどもディレクター』という、子がディレクターになって親御さんに話を聞くというドキュメンタリー番組で。まさに玖麗さんのご実家に行って、プロレスラーになると聞いてどう思ったか、という番組が放送されたのです。おばあさんはやはり孫が殴られるのが嫌だ、ということを話されていたり、『極悪女王』じゃないですけれど、プロレスラーの数だけ、その家族という物語があるんだなと痛感しました。Marvelousの選手も、暁千華さんとか彩芽蒼空さんとか、デビューに至るまで、Marvelousさんのご縁を頂いているので、親戚のような気持ちで試合を観てしまいました。『極悪女王』に関わったというのもあるからですけど、ビハインドの物語にはすごいドラマがありますよね。


(刀羅がボーッとしていじられたことを受け)「コミコン」という場所なのであえて言いますけれど、海外のヒーローシリーズだと、ヴィランって必ず必要なんですよ。で、ヴィランだけのスピンオフもたくさんあるし、ヴィランのブースもたくさんあるように、光と影も両方あって成立する世界。「コミコン」の世界と、この女子プロの歴史と今、というのがとっても重なって、いち観客として胸熱でした。

 

ー『極悪女王』の撮影について、これまで出していない面白いエピソードはありますか?

 

ゆりやん 興味深い中でいうと、松本香さんがダンプ松本さんに変わる瞬間のシーンで、松本さんが急にリングに上がって、“帰れコール”が起こるという場面で。台本は、「帰れコールを受ける香」だったんですけれど、そこで私は「帰れ、帰れ」でこうやった。その時長与さんが来て、「その時松本はプロレスで初めてフォーカスされた。当時、“帰れコール”を受けたら、耳を澄ませて聞いていたよ。もっと聞かせてくれよ、という意味で、両手を広げて舌出していたよ」って。その時ちょうど斎藤 工さんがリングのすぐそばに立っている瞬間だったんですよ。「このお昼休憩が終わったらこのシーン撮ります」ってなって、ベロ見られるの恥ずかしいって思って、めっちゃベロ磨いた。本当だったら長与さんご本人に当時のこととかリアリティを教えてもらって、「本当に嬉しい! すごい! 感動します! めっちゃやります!」ってなるけど、「あっちゃー、斎藤 工が下におるやん」ってなりました。(笑)


 

斎藤 最後の試合のシーンなんですけれども。実際には、一連でやっていらっしゃるんですよね。もちろんカット割りで色々な場面が繋がれて、それが流れになっていますけれど、実際、現場ではほぼ一試合、まるまるノンストップでできちゃっているんですよ。それを、トレーニングの方や、僕ら松永兄弟を演じた我々が見守っているんですけれども。その最後の試合が終わった時、エキストラの人たちが総立ちで、僕らキャスト全員も総立ちで泣きながら拍手して。あの瞬間は本当に忘れられないですね。だから、俳優さんというカテゴリじゃなかったですね、リングの上に立っていた人たちは。

 

長与 本当に一つになっていましたね。皆が円の中にガッツリいるという感じが心地良かったですね。(長与役の)唐田えりかさんが坊主になるので、皆ピリピリしていて。一回しかできないじゃないですか。集中力がすごいなと思いました。

 

斎藤 髪切りデスマッチって、あれ以降もあるんですか?

 

長与 もちろんあります。色々な団体で髪切りデスマッチは行なわれています。元々、メキシコのレスラーってマスクマンが多くて、負けたらマスクを剥いで素顔になるというのが通なのですが、それとはまた別で、髪の毛を賭ける試合があり、それが日本に来て始まったんですけれども。日本で初めてやられたのは、ジャガー横田さん。その2つ目が私たち。それ以降もありますが、私たちの時代って、ダンプさんがあまりにも強烈すぎて。


剃っていく時の面白い話があって。私は当時髪の毛が長かったので、うまく入らなかった。それが半端じゃなく痛く、中途半端な坊主にしかならなかったんです。それで、2回目のリベンジで私が勝っていて。私はこういう風(ダンプさんの顔が見える位置)に座っていたのですが、床屋さんが来て、ダンプさんの髪の毛を櫛でときはじめ、髪の毛を持ってササササッって(切り始めて)。その時ダンプさんが「バリカンでやれよー!」って叫んで。私は精も魂も尽きはじめているんですけれど、とかれているのを見て、「髪切りマッチってこんなだったっけ?」って思いながら。で、「バリカンでやれよー!」って言っていた時に彼女と一瞬目が合ったのですが、その時に申し訳ないんですけれど、私は笑ってしまっていて。彼女も、ムッとしているけど笑っていたんですよ。今回はあのシーンがなくて良かったなと思いました。(笑)

 

<会場笑>

 

・・・

 

締めの一言の場面では、ゆりやんは放屁をお見舞い。最後の最後までエンターテイメントに富んだステージだったのでした。



 

 

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